右脳開発にはうつ病の危険性があるうえに学術的な根拠がない

「七田式」を筆頭とする「天才キッズ」を育てることをキャッチフレーズにする幼児教育において、「右脳開発」を売りにするところがとても多かったため、手元にあった家庭用の医学書で「右脳と左脳」について調べてみたところ、以下のような記述がありましたのでご紹介します。

左脳と右脳の仕組みとはたらき

左脳と右脳の役割を簡単に言い切れるほど脳のメカニズムは単純ではない

左右の脳は別々の感情を司る

長い間、右脳は感性、独創性、企画力などを司る創造的なソフトの脳で、左脳は言語、計算など、機械的ないわばハードの脳だとされてきました。

しかし最近ではまったく新しい研究が行なわれ、左右の脳は別々の感情を司ること、右脳と左脳の役割をそれほど簡単に言い切ることはできないことなどがわかってきました。

覆された従来の「左右脳の役割」

さらに従来言われてきたことと違って、右の脳はうつの感情を生み、左の脳は幸福感をもたらすことがわかったのです。

実際、脳梗塞になった人の場合を調べると、右脳が脳梗塞になった人は、左脳が積極的に働こうとするので、ものの見方が楽観的になりますが、左脳が脳梗塞になった人は右脳ばかりが働くので悲観的になります。

従来は創造的でないといって否定されていた音読や計算は、左脳を活性化し、脳内を明るくする方法であることがわかりました。

また、うつ病の親に育てられた子どもは、感情が暗くなりやすいのですが、このような子どもの脳波を調べると、左脳の脳波の活動は低下していて、右脳の脳波は活発になっていることがわかりました。

右脳の過度な刺激は危険を伴う

うつ症状が改善されるのです。

うつ病の治療法に、脳の表面に磁場を作り、脳内に電流を流す「rTMS(反復性経頭蓋磁気刺激法)」というものがあります。

左脳の前頭前野の部位に電流を流すと、うつ病が改善されるのです。

最近の研究では、海馬の細胞が抑制されるとうつ状態になるということがわかっていますが、右脳の活性の高い人は、抑制物質のコルチゾル(副腎皮質ホルモン)の分泌が盛んになっていることもわかりました。

このように考えると、いたずらに右脳を刺激するなどという方法が本当にあるとすると、危険極まりないということになります。

からだのしくみと病気がわかる事典 | 日本文芸社

お子さんを天才キッズに育てようとして、フラッシュカードなどを使っていたずらに右脳を活性化させることは、うつ病を発症させるリスクがある危険極まりない行為だということです。

子供のためにと思ってお子さんに幼児教育を受けさせている方にとっては、その「右脳開発」にうつ病のリスクがあると聞けば、俄かには信じがたいことかもしれません。

この引用文はネット情報のコピペではなく、書籍の内容を手入力したため引用元リンクはありませんが、この書籍を監修したのは高田明和・浜松医科大学名誉教授で、この先生は脳科学者でもあるそうです。

高田明和 – Wikipedia

Wikipediaを見ると、脳科学者なので当然と言えば当然ですが、「脳」や「うつ」に関する著作が数多くあります。※文章を引用したのは監修した書籍に該当するため、著作リストには入っていません。

お子さんのためにと思って精力的に「右脳開発」教育を子供に受けさせた結果がうつ病では、親としては悔やんでも悔やみきれません。

そのような不幸な出来事が起こらないようにとの思いから紹介させていただきました。

右脳開発には学術的根拠がない

「右脳開発」にうつ病を発症させるリスクがあることを知り、「右脳開発」の危険性について調査してみたところ、今度は「右脳開発」は学術的な研究がなされていないという情報に目が留まりました。

【受験に勝つ医学129】
右脳神話には騙されるな!
創造力のある人が右脳優位などという研究は世界中に皆無。
むしろ、右脳優位になると、うつ病のリスクが高まる!

【解説】

言語中枢は左側の脳にあり、言葉でものごとを考えるときは、左側の脳が活動しやすくなるという傾向があるのは事実。

一方、音楽を聞いたときに、右側の脳が活動しやすくなるのも事実。

でも、右脳の活動が優位な人が創造力があるなどという研究は、ちゃんとした学術的なものは、まったくありません。

だから、右脳の活動を優位にして発想力を高めましょうというのは、神話の領域を出ません。

むしろ、はっきりしているのは、うつ病になると、右脳の活動が優位になりやすいということです。

つまり、右脳が優位になるというのは、けっして望ましいことではないのです。

実際、左脳の活動を優位にすることで、うつ病が治療できます。

頭の外から磁気刺激を脳に与えて、うつ病を治療する「TMS」という新しい治療法が、今、注目を集めています。

基本的には、左側の背外側前頭前皮質という部分を磁気で刺激して活発に働かせると、うつ病が治るのです。

さらに、右側の背外側前頭前皮質という部分の活動を低下させると、うつ病を治療する効果が高まります。

右脳の活動が優位になると「うつ病」のリスクが高まる!【受験勉強の医学講座!】

創造力のある人が右脳優位などという研究は世界中に皆無ということですから、「七田式」をはじめとする右脳開発には学術的な根拠がなかったわけですね。

幼児教育の分野だけでなく、自己啓発や能力開発といった分野でも「右脳」をタイトルやキャッチコピーに含めた書籍を普通に書店で見かけていたので、少々意外な気がします。

「右脳」というと人間の体の器官に当るので、医者や脳科学者によって書かれているものだと思いがちですが、実際にはそうではなかったようです。

「右脳を鍛える」ことについて科学的な根拠が乏しいとする説はWikipediaにも紹介されていますね。

右脳・左脳論 | 脳機能局在論 – Wikipedia

このように医学界からは右脳の活性化には学術的な根拠がないと指摘されていますが、右脳開発ビジネスで儲ける側はどのように受け止めているのでしょうか?

「右脳開発」の代表的なツールであるフラッシュカード教材を取り扱う業者の見解を見てみましょう。

フラッシュカードの弊害とは?

「フラッシュカードの弊害」とはどのようなものでしょうか。

塾や教室の経営者の方々や、フラッシュカードを子どもに実践させたお母さま方の体験談の中で、弊害によるものとして記述されているものを抜粋してみました。

  • 独り言をいうようになって、物事に無関心になった
  • 自主性が失われた
  • 反射的に文字やマーク、物の名前に注意がいってしまう
  • 自然な遊びができなくなり、機械的な声で話したり読んだりする
  • 生気が見られず、元気がなくなった
  • 自閉症と似た言動をするようになった

これらの原因がフラッシュカードの弊害によるものなのか否かは、医学的にも脳神経科学的にも証明されていません。

そこで、これらの情報を基に、さらに調べていくと、あくまでも推測の域になってしまうものの「弊害」の原因らしき2つの共通項が見えてきました。

弊害を発生させる2つの原因(共通項)とは?

「弊害」の原因らしき2つの共通項は、フラッシュカードという教材の2つの特殊性にありました。

1.フラッシュカードが子どもの自主性を無視した「受け身型」のメソッドであること
2.フラッシュカードが「パターン化された知識」を詰め込む学習教材であること

これらは、ある意味当然の結果といえることなのかもしれません。先に述べたようにフラッシュカードの目的は「大量の情報を脳にインプットする」ことであり、子どもが感動したり、体験したりする広義の学習メソッドとは、全く異なるメソッドです。

どんなに優れた教材でも偏った取り組み方をしていたら何らかの問題が生じます。

フラッシュカードは「大量の情報を脳にインプットする」ことに特化した教材である分だけ、偏った取り組み方による弊害の可能性も大きいと言えるようです。

いずれにしても「フラッシュカードの弊害」に関する科学的・医学的根拠が示されていない現在、真実は専門家の研究成果を待つしかありません。

しかし、幼児教室で実践しているフラッシュカードを目の当たりにすると、あまりにも受け身で機械的な取り組みのようすから「子どもが無感情になりそう」というイメージを抱くのも、うなづけるような気がします。

フラッシュカードとは? フラッシュカードの効果 弊害 対策法 フラッシュカードDVD について

実際にお子さんをフラッシュカードを使った右脳開発教育を受けさせた親御さんの体験談として挙げられている事例は、正にうつ病の症状そのものですね。

  • 独り言をいうようになって、物事に無関心になった
  • 自主性が失われた
  • 反射的に文字やマーク、物の名前に注意がいってしまう
  • 自然な遊びができなくなり、機械的な声で話したり読んだりする
  • 生気が見られず、元気がなくなった
  • 自閉症と似た言動をするようになった

引用文では、子供がうつ病の症状を発症したことが、「フラッシュカードの弊害」であるという科学的・医学的根拠が示されていないと言及しています。

しかしこれを言い換えれば、「右脳開発」教育・教材を売る側がしかるべき機関に依頼し、提供する教材やサービスの安全性を消費者に保証する義務を怠っているということでもあります。

この業者はフラッシュカードDVDを取り扱っているため、DVDならフラッシュカードの弊害は問題にならないなどと詭弁を弄していますが、フラッシュカードが右脳を活発化させるツールである以上、うつ病を発症させるリスクがあることに変わりありません。

事前に親御さんが右脳に過度の刺激を加えることがうつ病を発症させる危険性があるということを認識していなければ、この業者の言い分にうまく丸め込まれ、危うくうつ病の危険性がある教材をお子さんに買い与えてしまう危険性があるわけです。

また、テレビのバラエティ番組でもおなじみの脳科学者・澤口俊之氏もフラッシュカードの有害性について言及しています。

【10/03/01】フラッシュカードは有害か?

私はある頃から,脳教育,とくに幼少期での脳教育や発達障害改善の研究と実践にかなり力を入れてきた。

その理由は色々あるけれど,私は未来志向性がかなり強いので,「将来のことを考えると,子どもたちの脳育成は重要」という理由が大きい。

もとより,従来の幼児教育や発達障害改善が科学的で有効性もあるなら,私があえてそのような営為を進めるのは不要だが,残念ながら多くの場合,そうではないのが現状である。

そうした一例が「フラッシュカード」である。

これは,もちろん,コンピュータなどで使うメモリデバイスではなく,幼児教育法の一種である。しかも,脳科学的な装いをしているので,脳科学者としてはかなり気になる。

この幼児教育法の「理論」に関して議論すると長くなる,というか,「右脳 vs. 左脳」という間違った二分法・考えに基づいているため疲れるので省略するが,1990年頃から20年ほどの歴史がある幼児教育法である。

フラッシュカードに関して解説すると長くなるのでやはりごく簡単に述べるに留めたいが,一言でいえば,多くのカード(たとえば多くの国旗)をまさにフラッシュのように次々と素早く見せて,そのカードと結び付いている事柄(国旗なら国名)をなるべく早く言わせる,という方法である。

脳科学あるいは心理学の言葉でいえば「連合学習」を行ない,ある刺激(例えば国旗A)からその刺激と連合している事柄(国名A)を早く言わせるという方法論である。

連合学習法はごく普通の学習法だが,フラッシュのように次々に見せて答えさせるという点は,かなり独特である。しかも,訓練すれば,5~6歳児が全てのカードに関して正しく素早く言えるので,正直言って驚く。

しかしながら,脳科学からみれば,この方法は大元になる理論(右脳左脳二分法)以外に,理論的にいくつかの(やはり詳細は省くが)問題があるし,フラッシュカード法がどのような脳機能を向上させるのか(あるいは低下させるのか)不明である。

ただ,脳科学的には仮説は簡単に出せるし,その検証もかなり簡単である。しかも,20年もの歴史があり,かなりの子どもたちが実際に行なってきたし,現在でもそうである。

なので,私自身は,そういった仮説は既に出されていて,検証もされていると思っていた。

ちなみに,欧米で「flash card」といえば,小学校などで先生の質問に対して答える際の方法・カードのことを指す(response card とも言う)。カードに答えを書いて示すことで,声を出して答えるよりも全員の生徒が答えられるし,先生も全ての生徒の答えを見られる,といった利点がある。

なので,flash card (response card) 法はそれなりの意味があり,そういう論文も多少はある(e.g., Cuvo et al. 1992; Cavanaugh et al. 1996; Davis et al. 2004)。

しかしながら,くだんのフラッシュカードに関しては,まともな論文(つまり英語の原著論文)は,私の知る限りゼロである。

そういう論文があったら是非とも教えて頂きたいのだが,全く見当たらないので,フラッシュカード法に関する科学的調査はこれまで全然なされていないとみなすしかなく,非科学的というしかない(そもそも理論自体も滅茶苦茶だし・・・)。

しかし「非科学的」の一言で片付けられる問題ではないことは明らかである。子どもたちにとってプラスなら非科学的でも(当然ながら)問題ないが,マイナスだったら・・・,これはトンデモナイことである。

実際,「フラッシュカードは有害」という批判がかなりある。しかし,そうした批判にしても原著論文を参照したものではなく(あれば教えてほしい--くどいが),逸話的証拠(anecdotal evidence)に基づくか,ヒドイ場合には「為にする批判」としか思えないものでしかない。

で,私自身で調べてみることにしたのだが,主要な発見(findings)は次の2点である。

1)フラッシュカードをしていて,その能力が高い幼児(6歳児)ほど,反応抑制・自己制御力が低く,衝動性・多動性の程度が有意に高い(その相関はこの種の調査ではかなり強く,有意水準も1%以下である)。

2)フラッシュカード能力が高い幼児(6歳児)は,ToM(心の理論)をもたない傾向が有意にある。

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2)に関して補足すれば,フラッシュカード法を導入していない園では,6歳児の全てがToMをもつので,もたない6歳児がいる,ということ自体が問題である--この調査をした園では60%(!)である。

ついでに言えば,フラッシュカード法を導入していない園に比べて,当該園では衝動性・多動性の程度が有意に高かった。

6歳でToMをもたないと,定義上,自閉症かその傾向があるとみなすしかないし,衝動性・多動性の程度がある程度以上高いとADHDかその傾向を疑わざるを得ないわけで・・・。かなり深刻な調査結果である。

さらにいえば,私が調べた限り,主要な「脳力」(一般知能gFやワーキングメモリ能力WQ,あるいは注意力など)と,フラッシュカードの能力とは何の関係もなかったし,gFや注意力に関してはマイナスの相関傾向(P < 0.1)さえ認められた。

つまり,フラッシュカードの能力は,調べた脳機能に関する限り,反応抑制・自己制御とToMという脳機能とのみ有意に関係し,しかも,その関係はマイナス,ということになる。そして,フラッシュカードをすること自体がこれらの脳機能の発達にマイナス,とみなせる。

従って,フラッシュカードは幼児では脳機能の発達を阻害する,と結論できる。

ただし,これはある園での少人数のサンプルでのpreliminaryなfindingsでしかないので,調査結果の信頼性の程度はさほど高くない。

とはいえ,この程度のサンプル数でもnonparametric testによって統計解析すれば,それなりの信頼性は担保できるし,そうした統計解析をしたことはもちろんのことである。

しかも,調べた園では10年以上フラッシュカードを熱心にしてきた園で,その方法は標準的なものなので,いわば「フラッシュカード法の代表サンプル」と言うことができる--この点でもそれなりの意味のある調査結果だとみなせるわけだ。

ただ,念のためいえば,ちょうどTVゲームがそうであるように,フラッシュカードの具体的な方法や日々の遂行時間,種類などによっては,なんらかの脳機能の発達にプラスであるかもしれない。

これは今後の課題と言うしかないが,本来なら(何しろ20年ほどの歴史があるわけだから)きちんとした科学的かつ定量的なデータ(印象論や逸話的データでははなく)と,フォローアップ調査があってしかるべきで,当然ながら論文(英語の原著論文)もなくてはならないはずだが,先述のように,私は残念ながら知らない--なので,自分なりに調査してみたわけだ。

くどいが,もしそういう論文(やはりくどいが,英語の原著論文)があれば,是非とも教えてほしい。そうすれば,その諸論文を精査して,私自身のデータと照らし合わせることで,妥当な結論が導けるはずなので。

さらに念のためいえば,今述べたようなことは,フラッシュカード法に限ったことではなく,幼児教育に関する多くの「△△法」に関しても言えることで,フラッシュカード法を取り上げたのは,その歴史の長さと普及率の度合いなどのせいで,それ以外に他意はないことを申し添えて置きたい。

【10/03/01】フラッシュカードは有害か? (脳科学者はかく稽ふ)

ご覧いただいたように、「右脳開発」には医学や脳科学の分野から研究に基づいた学術的・科学的根拠がないと指摘されています。

また、欧米で「flash card」と言うと、小学校などで先生の質問に対して答える際の方法・カードのことを指すということです。

そのうえ英語の原著論文も存在しないということですので、「フラッシュカード」は日本独自で行われている幼児向けの教育法である可能性が高そうです。

しかもそのフラッシュカードが目的とする「右脳開発」を研究した学術的な論文もこの世に存在せず、科学的根拠がないものだということも分かりました。

更に「右脳開発」を謳った幼児教育や人材育成コンサルタントの会社や団体の代表には、「元・七田式の講師」という肩書を持つ人物が多いという事実もあります。

これらのことを総合すると、研究に基づいた科学的な根拠がなく、うつ病発症の危険性を多分に含む「右脳開発」の起源はどうやら「七田式」にありそうです。

七田式といえばフラッシュカード
子供をうつ病にするリスクがあるフラッシュカードは「七田式」が起源?

学術的な研究がなされていない右脳開発に科学的な根拠はあるのか?

「右脳開発」のルーツが「七田式」にありそうだということが分かりましたので、「七田式」が何を根拠に「右脳開発」教育を始めるに至ったのか、先ずはその創始者である七田眞氏の経歴を調べてみました。

七田 眞(しちだ まこと、1929年7月28日 – 2009年4月22日)は日本の教育研究家。

中国東北部生まれ、島根県出身。

1958年、島根県江津市に「児童教育研究所」という塾を開いた。高校生クラスからAFS日本協会試験の合格者を出すなど、次第に評判を呼び、その後、「右脳」の力を引き出すことを目的とした幼児教育(七田式教育)を提唱した。

『0歳教育』を提唱して反響を呼び、1976年に江津市に実践教室を開設。

1978年には「有限会社七田児童教育研究所」(現「株式会社しちだ・教育研究所」)を創立するとともに、フランチャイズ展開を目的とした「七田チャイルドアカデミー」(現「EQWELチャイルドアカデミー」)を創立した。2000年から、海外展開も始まった。また、1987年からは、七田式教室校長を務めた。

2009年4月22日、東京都新宿区内の病院で死去。79歳没。

七田眞 – Wikipedia

七田 眞氏は1929年に中国東北部で生まれたということですから、1931年に満州事変が起きる2年前に満州の地で生まれたことになります。

いつ頃満州から日本に引き揚げて来たのか、その後の経緯が不明ながら、1958年、七田氏が29歳の時に島根県江津市で学習塾の経営を始めたようです。

その後、1978年に始めた「七田児童教育研究所」が現在の「七田式」へとつながっていきますが、残念ながら「右脳開発」のルーツが分かる情報についての記述は見当たりません。

Wikipediaの他の情報も見ていきましょう。

七田式教育(しちだしききょういく 英:The Shichida Method)とは、日本の教育研究家である七田眞が構築し、実践した教育法である。

大学時代、家庭教師をしていた七田眞は、1950年代初頭、人間の能力は、生まれた時に決められるのかと疑問を持ち始め、その後、カール・ビッテの「才能逓減の法則」という理論に出会った。

衝撃を受けた七田は、子供の才能に着眼し、独自の教育理論を構築。その教育方法を、「魂の教育」と称し、子供の潜在能力を引き出す、幼児の右脳教育に始まり、食育、そして、大人の右脳開発へと展開した。

七田式教育 – Wikipedia

カール・ビッテの「才能逓減の法則」という理論に出会ったことから、子供の才能に着眼し、独自の教育理論を構築ということです。

ここで「カール・ビッテ」「才能逓減の法則」というワードが登場しました。

この「カール・ビッテ」という人物が右脳の研究をした人なのでしょうか?

しかし、独自の教育理論という記述があることから、「カール・ビッテ」も「才能逓減の法則」も「右脳開発」とは全く関係がない可能性もあります。

そのうえこのWikipediaの記事では情報の出典が明らかにされていないことに加え、「カール・ビッテ」も「才能逓減の法則」も日本語版Wikipediaにはページが存在しないようです。

何だか雲行きが怪しくなってきました。

そこで先ずは七田眞氏に衝撃を与えたという、「七田式」の教育理論のルーツと考えられる「才能逓減の法則」とはどのような理論なのかを知るべく調べてみました。

そうすると、この「才能逓減の法則」については「七田式」のHPでも紹介されていました。

才能逓減の法則
バランスのとれた全人格教育 | 七田式の幼児教育 より

また、「才能逓減の法則」と「七田式」の関係については、七田眞氏の息子であり、現在の「七田式」代表である厚氏がインタビューに答えている記事がありました。

――まずは七田さんが提唱している「七田式教育」が、どのようなものなのかを教えていただけますか。

七田:私の父である七田眞が約60年前に築き始めた独自の教育理論です。父が20代半ばのころに、ドイツの文学者にして法学者のカール・ビッテが提唱する「才能逓減(ていげん)の法則」という理論に出会ったことがきっかけでした。

「才能逓減の法則」では、人の才能は歳をとるにつれて逓減していくと考えます。つまり、人間は生まれた瞬間、その人自身の最大級の能力を持っているという捉え方をするわけです。ビッテはまた、子供が本来持っている能力を引き出せるかどうかは親の働きかけ次第だとも語っています。

この理論を参考に、七田式教育では、周囲の大人からの働きかけによって子供の潜在能力を引き出すことを目指しています。

これは経験上思うことですが、親がうまく働きかけることができれば、子供は「興味の湧くもの」が見つかる。それが見つかったときというのは、子供の目の色が変わるので、すぐに分かりますね。

――今おっしゃった「才能」や「能力」とは、主に右脳に関連したものを指しているのでしょうか。

七田:そうです。子供は幼児期に、できるだけ3歳までに右脳を鍛えておくのが望ましいと考えています。というのも、子供の発達過程を見ていくと、右脳が先に成長し、3歳前後から次第に左脳が優位になり、6歳になると脳全体が大人と同じ働きになるからです。

本田望結が幼くしてフィギュアスケートに出会えた理由

ここでも私の父である七田眞が約60年前に築き始めた独自の教育理論ですと語っておられますね。

そこで、もう少し具体的に「才能逓減の法則」について知るために情報を探してみましたが、Googleの検索結果に出てくるものは殆どが「七田式」関連のWEBサイトばかりで、第三者が「才能逓減の法則」について説明したものが見つかりません。

才能逓減の法則 – Google 検索

Wikipediaも存在していなかったように、この「才能逓減の法則」も「右脳開発」と同じく学術的な論文が存在しない理論なのかもしれません。

それならばということで、「才能逓減の法則」を提唱したとされる「カール・ビッテ」なる人物について調べてみました。

英語版Wikipediaにはカール・ヴィッテは以下のように記されています。

Johann Heinrich Friedrich Karl Witte (born July 1, 1800 ; died March 6, 1883 i) was a German jurist and scholar of Dante.

Witte was the son of pastor Karl Heinrich Gottfried Witte who encouraged a fairly intense program of learning. When Karl Witte was nine, he spoke German, French, Italian, Latin, and Greek, and on April 10, 1814, at the age of 13, he became a doctor of philosophy at the University of Giessen in Germany. As a result, Witte was listed in The Guinness Book of World Record as the “youngest doctorate”, a record that still stands; however, The Guinness Book of World Records lists his age as 12.

ヨハン ハインリッヒ フリードリッヒ カール ヴィッテ(1800年7月1日生れ、1883年3月6日亡)はドイツの法学者でダンテ研究者(学者)。ヴィッテはかなり強烈な学習プログラムを奨励したカール ハインリッヒ ゴットフリード ヴィッテ牧師の息子でした。カール ヴィッテが9歳のとき、独語、仏語、伊語、羅甸(ラテン)語、希臘(ギリシャ)語を話し、1814年4月10日13歳の時、ドイツのギーセン大学の哲学博士になりました。その結果、ヴィッテはギネスの未だもって世界記録であると記されている「最も若い博士号の学位」として列せられています。世界記録ギネス本には彼の年齢は12歳とされている。


カール・ヴィッテは一八〇〇年、ドイツの小さな村に牧師の子として生まれました。牧師だった父は、非常な卓見の持ち主で、当時としては驚くべき独創的な教育論を持ってゐました。それは一言で言えば「子供の教育は、子供の知力が見え始めたと同時に始めるべきだ」といふものでした。さうすれば、大抵の子供は将来非凡な人間になるといふのです。ただし、彼はその著書の中でこう言ってゐます。「自分は天才を作るつもりで、このやうな教育をわが子に施したのではない。ただ円満な人格の人間を育てようとした結果、このやうになったのだ」と。

とかく早教育や英才教育は批判の的になります。かういふ教育の結果、偏った人格や病気がちの弱い肉体の持ち主になってしまふといふ心配をする人があります。それにカール・ヴィッテの父親は答へたといふわけです。実際には、カール・ヴィッテは偏った人格とはおよそ程遠い円満な人柄で、健康面でも八十三歳といふ当時としては大変な高齢まで元気で法学者としての仕事を続けてゐましたから、かういふ批判は当たりませんでした。

カール・ヴィッテは、幼児期に既に三万語の語彙を持ち、フランス語、イタリア語、ラテン語、英語、ギリシャ語をマスターし、特に数学では将来を嘱望されるほどの才能を示しました。僅か九歳でライプチッヒ大学に入学を許され、十三歳で哲学博士、十六歳で法学博士になり、ドイツの各大学で法学の講義を行ひました。かたわら、イタリア留学中に興味を抱いたダンテについても、その道の専門家も舌を巻くほどの研究があったといふ多方面にわたる学者でありました。

言葉は知識を刈り入れる道具 カール・ヴィッテの教育法1

カール・ヴィッテは父であるヴィッテ牧師(親子ともカール・ヴィッテなので紛らわしい)が持つ、円満な人格の人間を育てよう思想の元で育てられた結果、ギネスブックに「最も若い博士号の学位」を12歳で受けたと記録されている天才のことだそうです。

そしてこの「カール・ビッテの教育」を日本に初めて伝えたのは、1917年に出版された木村久一著「早教育と天才」だとされており、七田眞氏が読んだのもこの本のようです。

早期教育の全貌をとらえようとすると、まさに思考の林にまよいこむ思いがするけれども、早期教育の実践例ということになると、その道筋はわかりやすく理解しやすくなる。根幹をなすものは一八〇〇年初頭の『カール・ビッテの教育』であり、次は一九〇〇年代になって『カール・ビッテの教育』のを実践に移した人達の実績であった。木村久一氏が『早教育と天才』を出版(大正六年)したのはこれに関連した出版物をみて、まとめたものだったと思われる。七田真氏はこの本を手にして子供の教育にあたったものである。

早教育と天才 1

早教育と天才 1

早教育と天才 2

早教育と天才 3

私が「カール・ビッテの教育」について感じたことは、「天才児を育てるための教育法」というよりも、どちらかというと「子供を持つ親が育児に携わる際の心構え」といった内容です。


上記リンクは文章量がとても多いため、簡潔に「カール・ビッテの教育」について知りたい方は、以下のリンクをご参照ください。

カール・ヴィッテ教育の箇条書きまとめ!

ビッテ式の超英才教育がすごい!具体的なやり方をご紹介

『早教育と天才』


「カール・ビッテの教育」の著者が牧師であり、しかも200年前に書かれた本だということで、読む前から予想していたことですが、「カール・ビッテの教育」としては「才能逓減の法則」や「右脳」という言葉はどこにも見付けることはできませんでした。

しかも「カール・ビッテの教育」では子供に強制的に教えることはせず、まず親が子供に働きかけて興味を抱かせ、そこから教えていくという方法で行っていきます。

フラッシュカードなどを使って子供の脳を強制的に刺激する方法とは正反対の教育方法です。

また、先の引用文で七田厚氏が父が20代半ばのころに、ドイツの文学者にして法学者のカール・ビッテが提唱する「才能逓減(ていげん)の法則」という理論に出会ったことがきっかけでしたとインタビューに答えていましたが、本を書いたのは父で牧師の方の「カール・ビッテ」ですので、これも間違った情報だったわけです。

強いて「才能逓減の法則」に該当しそうな内容を挙げるとすれば以下の部分になるのでしょうか。

彼の教育の根本理念はかういふことでした。

「子供の生まれつきの可能性を一〇〇とした時、子供を放りっぱなしで育てれば、その能力は発現を見ることが出来ずにどんどん減ってしまふ。五歳になれば八〇に減り、十歳になれば六〇に減り、十五歳になれば四〇に減るといふ具合に。だから子供を育てるのに大切なことは、時期を失はないうちに、潜在的な能力を発達させることである。それには、早くから子供の能力に働きかけてこれを発達させなければならない。つまり、子供の中に少しでも知力が芽生えたと見えたら、ただちに始めなければならない。では具体的にどうすれば良いのか。それは子供に早くから言葉を教へることである。言葉は知識を刈り入れる道具に他ならないから、言葉を早く、多く教へることによって、知識を獲得する能力は、素晴らしく大きなものになるに違ひない。」

言葉は知識を刈り入れる道具 カール・ヴィッテの教育法1

これもビッテ牧師が「多分こうなるだろう」と仮定した法則に過ぎず、脳の能力を数値化したデータが存在するわけでもなく、複数のサンプルを検証した結果があるわけでもありません。

探してもWikipediaや学術的な説明を見付けることができなかった「才能逓減の法則」は、科学的・医学的な研究がなされていない科学的な根拠がないものだったようです。

才能逓減の法則について

あらゆる早期乳幼児教育理論の中で常識となっているのがこの「才能逓減の法則」です。

これを説明する為にはよく「ジャクソンとスキャモンの発育曲線」と「ベイレイの知能発達曲線」が引き合いに出されます。

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言うなれば、「3歳まで」に脳の基本性能は決まってしまうのです!

例えるならば3歳までは脳というコンピューターの、メモリ容量や処理速度といった基本スペックそのものを作りあげる時期。 3歳以降の学習は完成したコンピューターにソフトをインストールする作業、と言えるでしょう。

つまり脳のコンピューターそのものの性能に関与出来る時期は「今」しかないのです。
(ただし、大変優れた教師が思考力を格段に育てる特別なカリキュラムを実践すれば6~7歳頃まで脳の基本性能を育てるコトは不可能ではありません)


かつては公立小中学校で知能検査が実施されていたものですが、今はほとんど行われていません。

幾つかの理由がありますが、その一つに「8歳でIQを調べても14歳でIQを調べても、個人のIQには変化がないから知能検査を実施する必要はない」という事もありました。
それで「IQは生まれつき遺伝で決まっている」という説も有力になりました。

しかしそれは大きな間違いでした。

IQは3歳(広義では6~7歳)までにいかに多彩かつ良質の経験をしてより多くのシナプスを発達させ、脳の回路のネットワークを豊富に育てるか?にかかってくるのです。

知識の詰め込み・丸暗記だけならば6歳以降でも努力次第で出来ますが、考える力・創造する力・解決する力など本当の意味での「頭の良い子」に育てるには3歳までの環境で80%、6歳までの環境で90%が決まってしまうのです。

3~6歳までに望ましい生育環境になければその子の才能はほぼ凡庸の域に留まる可能性が高いでしょう。 その年齢までにしか習得出来ない能力もあります。
(一定の音域を聞き取る能力などは9歳が臨界期で、絶対音感や英語の正確なヒアリング能力はこの時期を逸すると二度と身につかないと言われます。英語のLとRの発音の母国語レベルでの聞き分けは0歳6ヶ月が臨界期とされています。)

しかし、才能逓減の法則は逆に言えば3歳までの育て方次第で、生まれも遺伝も関係なく「どの子でも驚異的に才能を伸ばせる無限の可能性が開かれている」と言えるのです。

適期教育の与え方次第で、どの子でも大変優秀に育つ事が出来るのです。

才能逓減の法則・幼児教育ポータルサイト

「才能逓減の法則」はあらゆる早期乳幼児教育理論の中で常識となっているそうです。

つまり早期乳幼児教育とは、「才能逓減の法則」という学術的な研究がなされていない信憑性に欠ける理論の上に成り立っている分野だということになります。

世の中で行われている学問や研究が全て正しいということはなく、寧ろイルミナティの利権のために庶民を騙す役割を担っている部分もありますが、研究すら行われていない不確かな理論を常識とするのはいかがなものでしょうか?

RAPT×読者対談〈第112弾〉現代科学の知識はどこまで本当か。

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七田式子育てマニュアル.pdf より

「右脳開発」も「才能逓減の法則」も医学的・科学的根拠がないものだということが分かりましたが、早期幼児教育ビジネス関連の情報ではそれらがいかにも正しい情報であるかのように断言しているため、その勢いに押されてうっかり信じてしまいそうです。

しかも「常識になっている」とまで言われてしまうと、たとえインチキ・デタラメな情報であっても、知らない方が悪いような気持ちにさせられてしまい、信じてしまう方もおられるかもしれません。

これもコピーライティングの技術(人間の心理を突いた巧妙な罠)ともいえますが、業界全体で同じ嘘の情報を共有し世の中に向けて情報発信していれば、何も知らない消費者は騙されてしまうわけです。

これを官民マスコミが一体となって行っている代表例が、原発利権がん利権になります。

早期幼児教育向けの情報だけを見ると、早期教育を行わなければ才能を伸ばすことができないかのように考えてしまいがちですが、世の中には大人向けの能力開発や自己啓発ものが溢れています。

『七田式能力開発』の目指すところ

時代が大きく変わり、人間の考えることや能力が、今までとは大きく変わってきています。

これまでは物質中心で、目に見えるフィジカルな世界が中心でしたのに、今は目に見えない精神性の世界が大きくクローズアップしてきています。

それを反映して、書店に並ぶ本も『引き寄せの法則』など、意識の世界を取り扱った本の出版が圧倒的に増えてきました。

知らないと時代遅れになるだけでなく、この時代をうまく生き抜くことができません。

これは、別な言葉で言えば、三次元的な左脳の世界から、高次元的な右脳の世界へ、世の中がどんどん変換してきているということです。

『七田式能力開発』では、長年右脳の研究をしてきた老舗としての実績をもとに、大人の右脳開発の方法を説き、どこよりも速効性のある取り組みを、会報やセミナーなどでお知らせしています。

右脳を開くのは、成人になってからでも十分開けます。

実際に、私どもの「七田式右脳開発セミナー」に出て能力が変わった、願いが叶いやすくなった、幸運を引き寄せるようになった、人生を充実させることができるようになったなどなどの喜びの声をたくさんいただいています。

七田式創始者 七田眞の想い | 七田式教育公式サイト

右脳を開くのは、成人になってからでも十分開けますということです。

「才能逓減の法則」はどうなったの?と、思わずツッコミを入れてしまいそうです。

あれだけ「才能逓減の法則」で、働きかけを遅く始めると、才能が伸びる可能性は低くなり、伸びても時間がかかってしまいますと閲覧者を煽っていたのは何だったのでしょうか?

誰がどう考えても話が矛盾していますよね。

子供たちからもこのように言われてしまいますよ。

うそつきはどろぼうのはじまり

「才能逓減の法則」が学術的な根拠に欠ける怪しげな理論だということが分かりましたので、ここで改めて七田眞氏のプロフィールを見ていきたいと思います。

七田眞氏の華麗な経歴

七田眞氏は様々な賞を受賞していたり、大学教授であったりと、何だか凄い経歴をお持ちの人物です。

七田 眞(しちだ・まこと)

(1929年-2009年)
米国ニューポート大学日本校、教育学部教授。
教育学博士。日本サイ科学会顧問。
七田チャイルドアカデミー校長。
しちだ・教育研究所取締役会長。

現在、七田式教育を実践している教室が全国で約400を数え、 アメリカ、韓国、台湾、 シンガポール、マレーシアなど海外にも 七田式教育論が広がっている。

1997年、社会文化功労賞受賞、 世界学術文化審議会より国際学術グランプリ受賞。
また1997年12月、 国際学士院の世界知的財産登録協議会より、 七田式右脳教育法が世界の知的財産として登録される。
2003年6月には、東久邇宮記念賞も受賞している。

七田眞のCD対談 | 総合法令出版

七田 眞(Makoto Shichida)先生 プロフィール

1929年生まれ。島根県出身。教育学博士。USアカデミー・アカデミシャン。日本文化振興会副会長。日本サイ科学会顧問。七田チャイルドアカデミー校長。しちだ・教育研究所会長。

1997年、社会文化功労賞受賞、世界学術文化審議会より国際学術グランプリ受賞。また国際学士院の世界知的財産登録協議会より、世界平和功労大騎士勲章を受章。1998年ユネスコ世界平和賞を受賞。2003年スウェーデン王立アカデミーより健康医学大賞を受賞。同年、東久邇宮記念会より、新しい教育の創造と振興に対して東久邇宮記念賞を受賞。日本アカデミー協会より、2007年日本文芸アカデミー賞特別賞、2008年日本文芸アカデミー賞ゴールド賞を受ける。

魂の教育とは何か~七田眞先生の講演をお聞きして~特別講師:教育学博士 七田 眞 先生

  • 米国ニューポート大学日本校・教育学部教授
  • 教育学博士
  • USアカデミー・アカデミシャン
  • 日本サイ科学会顧問
  • 日本文化振興会副会長
  • 社会文化功労賞受賞
  • 世界学術文化審議会より国際学術グランプリ受賞
  • 国際学士院の世界知的財産登録協議会より七田式右脳教育法が最優秀理論・世界知的財産として登録され、世界平和功労騎士勲章を受章、騎士(ナイト)の称号を受ける
  • 東久邇宮記念賞を受賞
  • ユネスコ世界平和賞を受賞
  • スウェーデン王立アカデミーより健康医学大賞を受賞
  • 日本文芸アカデミー賞特別賞・日本文芸アカデミー賞ゴールド賞を受賞

七田眞氏の肩書や受賞歴があまりにも多いので、いくつかをピックアップして見ていきたいと思います。

米国ニューポート大学日本校、教育学部教授

ニューポート大学とはあまり聞き馴染みのない大学名ですが、ニューポート大学のWikipediaには以下の様に記されています。

ニューポート大学は、1976年にニューポート国際大学(Newport International University)として設立されたが、1979年から2011年までニューポート大学に、2011年からJanus Universityに校名が変更されて現在に至る。海外にも数多くの分校を増やし続けて来たが、2003年に海外分校を全てニューポート大学から独立させて別組織とし、ニューポート国際大学を設立した。

ニューポート大学は、カリフォルニア州政府により学内の財政と教育の質等が大学として最小限満たされていると判断されてカリフォルニア州認可を受けていたが、アメリカ合衆国における公的な大学認定機関による認定(accreditation)を受けておらず、ミシガン州政府による非認定大学リストPDFファイルに記載されている。2011年4月に開催された第85回基準認定団体DETCカンファレンスに、参加者としてニューポート大学名が登録されている。ニューポート大学がカリフォルニア州から認められた授与可能な学位は、準学士、人間行動学学士及び修士、心理学修士、経営学学士及び修士であった(以前には、工学修士、宗教学、法学、教育学、人間行動学、心理学の博士号を取得できた)。

ニューポート大学 – Wikipedia

ニューポート大学とはアメリカ合衆国における公的な大学認定機関による認定(accreditation)を受けていない非認定大学だということです。

ではその非認定大学であるニューポート大学の日本校とはどのような学校だったのでしょうか?

ニューポート国際大学西日本校(にゅーぽーとこくさいだいがくにしにほんこう)は、かつて存在した米国大学日本校の1つ。1990年に財団法人によって、兵庫県に設置されたが、現存していない。 通信制。教育学部、経営学部、行動科学部(人間行動科学科)の3学部が置かれていた。

公式サイトによるとニューポート国際大学とはワイオミング州に認可された大学であり、州から学位授与権を取得していると主張していた。また日本を含めて24カ国にキャンパスがあるとしていた。

ニューポート国際大学西日本校 – Wikipedia

ニューポート大学日本校は通信制の大学ということなので、実際に七田氏が教壇に立って講義をするわけではないんですね。

また、ニューポート大学関連で調査しておりましたところ、七田氏の偽学位について言及している方がいましたので以下に引用しておきます。

七田さんはディプロマミル(偽学位)の世界に深く足をつっこんでいらっしゃることで一部で有名。
人柄もよさそうだしいいことも言ってらっしゃると思うけど、発言の半分はいいこと、半分はいいかげんなことといった印象。
プロの研究者が認めないような科学の原則を無視したような話でも、物理化学の知識がない一般人は、ありがたく聞き入ってしまうかもしれないので要注意。

こんなサイトに載っていた七田さんのプロフィールをちょっとコピペ。

右脳教育の第一人者と聴覚開発の第一人者の共著、ついに実現。「耳からの脳力革命」
七田先生・傳田先生特別対談

教育学博士 七田 眞
米国ニューポート大学日本校教育学部教授。七田チャイルドアカデミー校長。日本文化復興会名誉会長。1997年社会文化功労賞、同年、世界知的財産登録協議会より七田式右脳教育法が最優秀理論・世界の知的財産として登録され、世界平和功労騎士勲章を受章。著書は150冊を超える。

このプロフィールも張り子の虎。もっともらしい賞の名前があるけど、権威ある賞、信頼性の高い賞はひとつもない。
信頼性がない人に権威付けしてあげることを仕事にしている団体から贈られた賞ばかり。
教育博士の称号も、研究実体の無い大学(ディプロマミル)が発行した疑惑の学位であって、きちんと認定された大学からもらった博士号ではない。
しかも、権威のほしい個人経営者などに賞を与えている日本文化振興会という団体にも副会長として深く関わってらっしゃいます。一般人もきちんと見抜かないと。

七田さんの博士号は認定されている大学のものではないので、時刻表検定の鉄道博士号並みの価値もあるかどうかわかりません。
罪に問われないから名乗っていますが、どこかの大学の講師になることはできません。博士号を名乗って選挙に出ることもできません。
すでに七田さんの持っているような偽学位を持っていた大学の先生が不当に職を得たと言われ学歴詐称に値するとして退職させられたりしています。
七田さんと同じ学位を持っているドクター中松先生だって、選挙のときは博士号を経歴に書きません。認定された大学の博士号ではありませんから逮捕されてしまいます。

それから、誰も言ってないようですがけど、七田先生は新制大学を出てらっしゃらないのではないですか。
戦後すぐに北九州市にあった小倉外事専門学校を中退されませんでしたか。
もし私の認識が間違っているようでしたら正しい経歴、学歴をご連絡ください。すぐに訂正させていただきます。

小倉外事専門学校は北九州市立大学の前身となったいい学校だと思います。
経歴を隠す必要があるのでしょうか。
その学校で英語とフランス語を学んで、島根県江津市に帰郷した後に中高生向けに英語とフランス語の塾をはじめられたのが、すべてのスタートではなかったでしょうか。

ともかく、神秘主義や疑似科学やオカルトに関心のない人が七田眞先生にからむのは危険です。

七田一族と傳田一族と

参考リンク:学歴汚染(Diploma Mill・Degree Mill=学位称号販売機関による被害、弊害):ニューポート大学

日本文化振興会副会長・社会文化功労賞受賞

七田眞氏は「日本文化振興会」の副会長を務められ、同振興会が行う顕彰制度により「社会文化功労賞」を受賞しています。

一般社団法人日本文化振興会(にほんぶんかしんこうかい)とは、1971年に桟勝正により創設された民間の顕彰団体である。任意団体として創設され、有限会社組織を経て、2015年に一般社団法人格を取得した。

組織

1971年に桟勝正が大阪市西区にて日本文化振興会を創立した。桟勝正が初代理事長に就任し、初代総裁に東久邇稔彦を迎えた。設立目的を「日本文化の振興推進によって、日本文化普及ならびに国際文化の向上を進め、国際親善と友好を目指すとする。」としている。

現在は総本部を東京都中央区銀座8-8-15 青柳ビル8階に置き、伏見博明が第5代総裁に就いている。総裁とは別に会長職が置かれ、現在は第11代目の八谷元が務める。

業務

主たる業務の内容として顕彰制度を行っている。

  • 国際アカデミー賞
  • 国際芸術文化賞
  • 社会文化功労賞

その他、国際文化栄誉賞等の様々な名称の賞が存在し、それぞれの賞において記章を授与している。

歴代総裁
関連組織・団体

日本文化振興会 – Wikipedia

この「日本文化振興会」は旧皇族が総裁を務めていたりしますが、民間の顕彰団体だということです。

「社会文化功労賞」と聞くと国や自治体から表彰されたものだとばかり思っていましたが、実はそうではなかったようです。

資格商法「日本文化振興会」

しかも七田氏自身が副会長を務めた団体から受賞しているので、これでは自作自演ということになりますね。

また、関連団体として「国際学士院大学」が挙げられていますが、この国際学士院大学もニューポート大学と同様、アメリカに拠点をおくとされる非認定大学(ディプロマミル)であるそうです。

七田氏の経歴にある「教育学博士」という肩書も「国際学士院大学」で得たものかもしれません。

七田氏の経歴には出身大学名が明記されていないにもかかわらず、いきなり「教育学博士」という肩書が登場するので不自然に感じていましたが、この様なカラクリがあったのですね。

国際学士院の世界知的財産登録協議会より七田式右脳教育法が最優秀理論・世界知的財産として登録され、世界平和功労騎士勲章を受章、騎士(ナイト)の称号を受けるとの件がありましたが、こちらも非認定大学から受けた称号ということになりますね。

また、スウェーデン王立アカデミーより健康医学大賞を受賞という件も、以下のリンク先を見ると「日本文化振興会」が関係しているようです。

世界科学大賞受賞 盛岡・鍼灸師の岡本さん

では次に「社会文化功労賞」についても見ていきましょう。

社会文化功労賞(しゃかいぶんかこうろうしょう)は、日本文化振興会が授与する賞のひとつ。公的な賞であるかのような名称であるが、日本政府又は日本国内の自治体が関与する賞ではない。

受賞者には、日本文化振興会から「菊華勲章」というものを併せて授与されることがあり、また日本文化振興会の関連がある国際学士院大学の卒業生・修了生と重なる部分も多い。近年ではディプロマミルによる学位取得者も受賞している。自称の肩書きを名乗る者、また自らが代表を務める団体や関連組織を設立し、その団体・組織の発行する資格の所持を謳っている者等のプロフィールに加えられていることが多い。特に国家資格や公的資格を所持していないが、類似の名称やイメージを必要とする無資格の治療家や美容家が利用している傾向が強く、セラピスト業界、エステ業界に受賞者が多いのが特徴であるが、学術など他の業界・分野で実績がある者も含まれている。

モンドセレクションと同様に「根拠無き賞与」と言われることがあるが、公的な賞と混同しやすいため、悪徳商法のひとつとして位置づけられることが多い。公的な賞であると勘違いして言われるまま金銭を支払う受賞者と、顕彰商法であることを承知で受賞し経歴に反映する受賞者とがいる。

ただし、旧皇族が関係することからも民間団体としては有数の規模と歴史誇るものであり、国内的にも国際的にもその専門とする分野での活動と業績が極めて顕著であると認めた方に対し、毎年前期と後期に分けて審査・選考を実施している。

受賞者
  • 大塚健一(「健笑友の輪グループ」会長、「全国無憂扇友の輪」創設者、大分県出身の整体師。)
  • デューク更家(「ウォーキングドクター」)
  • 七田眞(教育研究家)・エー梅田代表)
  • 長谷川一幸(極真会館)
  • 鈴木留蔵(丸留建設株式会社社長、日本国際ギデオン協会元全国会長)
  • 伊藤修(レーザー療法の権威)
  • 藤岡リナ(藤岡リナ鑑定事務所、開運アドバイザー)
  • 直居由美里(同上)
  • 左能典代(作家、中国茶研究家)
  • 岡本羽加(鍼灸・マッサージ師、株式会社さらさら堂代表)
  • 大滝保 (横浜催眠心理オフィス・横浜気功院・大滝書店・大滝音楽教室・大滝進学教室ほか大滝グループ代表)
  • 川村明宏 (新日本速読研究会 ジョイント式速読術) 
  • 松尾幸造 (シェ松尾 フランス料理)
  • 山野愛子(山野短大学長)
  • 高賀富士子(資生堂顧問)
  • 高崎直道(鶴見大学総長)
  • 一松信(京都大学名誉教授)

社会文化功労賞 – Wikipedia

旧皇族が関わっている活動にハッキリと悪徳商法と言い切っていたので、私は思わず笑ってしまいました。

皇族から離れたといえども自然と悪事に手を染めてしまうのは、悪魔崇拝者のトップである天皇家の血を引く者が生まれ持った性なのでしょう。

また、文化功労賞受章者についてまとめている方がいましたので、参考までに以下にリンクを貼っておきます。

社会文化功労賞

このリンク先の情報では七田眞氏は「学校法人日本航空学園日本航空高校名誉顧問」でもあったようです。

叩けばまだ色々と埃が出そうな気もしますが、「右脳開発」ルーツともいうべき「七田式」の創始者である七田眞氏がどの様な人物であるのかはご理解いただけたのではないかと思います。

まとめ

当初は「右脳開発」と「うつ病」の危険性についてお知らせすることが目的でしたが、右脳開発を含めた早期幼児教育が掲げる理論の信憑性に疑問を感じ、色々と調査をしてみましたが、ついにその理論の裏付けとなる確かな情報に出会うことができませんでした。

最後に引用した情報などから得た要点をまとめておきたいと思います。

  • 右脳はうつの感情を生み、左脳は幸福感をもたらす
  • 右脳が脳梗塞になった人は左脳が積極的に働くので楽観的になる
  • 左脳が脳梗塞になった人は右脳ば積極的に働くので悲観的になる
  • いたずらに右脳を刺激するなどという方法は危険極まりない
  • 創造力のある人が右脳優位などという研究は世界中に皆無
  • フラッシュカードの弊害として「うつ病」や「自閉症」の症状が挙げられている
  • 「右脳開発」の代表的ツール「フラッシュカード」は学術的にまともな論文は存在しない
  • 早期幼児教育で常識とされる「才能逓減の法則」は学術的な根拠に乏しい
  • 早期幼児教育の理論と成人向け能力開発の理論は矛盾している
  • 七田眞氏のプロフィールは非認定大学や民間の顕彰団体から授与された役職や賞で権威付けしたもの

早期幼児教育や自己啓発における「右脳開発」教材により、あなたの大切なお子様やあなた自身が人生を狂わせてしまうことがないことをお祈りいたします。

世の中の悪が全て滅び、あなたに救いがありますように。

隠されているもので、あらわにならないものはなく、秘密にされているもので、ついには知られ、明るみに出されないものはない。だから、どう聞くかに注意するがよい。持っている人は更に与えられ、持っていない人は、持っていると思っているものまでも、取り上げられるであろう。
ルカによる福音書 8章17~18節